ヘンプは、綿栽培よりも水資源の使用量や土地の汚染が少なく、抗菌性・消臭性に優れているうえ、農薬に頼らずに育つ1年草です。すべての部分が利用可能な上、土壌改良までするという素晴らしい植物で、化石燃料などの枯渇性資源にたよらない循環型社会に貢献できる奇跡の植物です。
今回は、水資源と農薬使用に関して綿とヘンプの比較をしてみたいと思います。
ファッション業界でもサスティナビリティに対する論議が活発です。まずは、こちら2つの専門家の引用記事をご覧ください。
「ファッションと環境問題」
文/有川 真理子
「服は環境破壊をしている」
もしこう言われても、ショーウィンドーに並んでいる華やかな服たちがCO2を排出したり、森林を破壊したり、川や海を汚したりしているようにはなかなか想像しづらい。でも、ファッション業界が環境に与えている負荷は意外にも大きい。
化学物質の使用も多い。服の素材として約3割を占める綿は世界の農地の3%を占めているがこのわずかな土地で全殺虫剤の16%、全除草剤の7%が使われている※1。こうした農薬の影響で吐き気やガンなどの健康被害に悩まされる農家は多い。また、染色の際の重金属や環境ホルモンなどの化学物質が川や海を汚染し、地域の人々の飲み水を奪っている。淡水の汚染の20%は織物加工と染色によるという調査結果もあるほどだ※2。
※1 Global Fashion Agenda and The Boston Consulting Group, Inc. (2017), Pulse of the Fashion Industry
※2 Raybin, A (2009), Water pollution and textiles industry as cited in The Sustainable Academy (SFA) and The Global Leadership Award in Sustainable Apparel (GLASA) (2015), The State of the Apparel Sector – 2015 Special Report: Water
—引用抜粋ここまで—
「水」から考えるファッションのサステナビリティと、6つの実践。
—引用抜粋ここまで—
次にに見ていただきたいのが、The Stockholm Environment Instituteがレポートしている「綿、麻、ポリエステルのエコロジカルフットプリントと水質分析」。
原文の「(Ecological Footprint And Water Analysis Of Cotton Hemp And Polyester – 2005)」によると、1kgの繊維を取るのに必要な水資源は、綿 9788-9958リットルに対して、ヘンプ 2123リットル。
つまりヘンプの水の使用量は、綿の4分の1以下です。
また、WWF JAPANも綿は水環境に大きな影響を及ぼすと警告しており、さらに農薬についても下記の記事の中で触れています。
コットンって環境に悪い?サステナブルファッション視点でのコットンの生産と利用
農薬については、WWFが独自に算出したデータによれば、世界の耕作地面積の約2.5%を占めるに過ぎない綿花の栽培面積で、世界の殺虫剤の放出が16%されています。これは、他のどの単一作物よりも多く、世界の農薬使用量の6%以上です。
—引用抜粋ここまで—
ヘンプはは、丈夫な植物であまり土地を選ばず、化学肥料/農薬を使わなくても栽培が容易と言われています。「一般産業用向け」の大麻の栽培は他の作物と比べて農薬の使用量も少なく又栽培も難しいものでありません。
しかし、そのヘンプを知る人はあまり少なく、本来日本人の生活・文化を支えてきたものにもかかわらず、 その加工技術が途絶えようとしています。
こちらは、一般社団法人「伊勢麻」振興協会のサイトから引用抜粋した文章です。
麻の栽培/精麻加工技術が、今まさに途絶えようとしております
古来より戦前まで、麻は日本人の生活/文化を支える天然素材として、全国津々浦々で栽培され利用されてきました。
1934年に全国で約1万ha以上栽培されていた麻は、戦後、GHQの意向により施行された法令(大麻取締規則⇒大麻取締法)、化学繊維との競合、世間の誤解(麻に対する間違った認識)等により減少の一途をたどり、昭和29年に37,000人を数えた大麻栽培者は、今や僅か33名になってしまいました。
しかも、神事に不可欠な「精麻」(大麻繊維)の生産を続けているのは、栃木県の麻農家だけです(わずか10軒程度)。その栃木でさえ、夏場の収穫作業のたいへんさ、精麻加工の手間/要求される技術の高さなどから、担い手の確保が難しく深刻な高齢化が進んでおります。後継者がいるのは一軒のみという状況です。
その為、神道/神事に不可欠な精麻は年々高騰し、現在流通している精麻の大半は、中国産もしくは化学繊維の模造品になってしまいました。
—引用抜粋ここまで—
実際に、私たちが使用しているものも現在は中国産のものが主流。最近ではアメリカでも栽培が認められ、繊維を作り始めているようです。ヘンプは、繊維だけでなく食用や油など様々なものに利用でき捨てるところがないものです。
今回は、ヘンプ vs. コットンの比較が “水資源と農薬” のみになりましたが、次回は、他の観点からも比較してみたいと思います。
日本古来から文化として根付いてきたヘンプをもう一度見直してみる時ではないでしょうか。
皆さんはどのようなご意見をお持ちですか。